配植計画

 植栽にはただ美しいというだけでなくいろいろな働きがあります。それを造園学的にいうと植栽の機能ということになります。プランニングをしてお客様に提案をしていくためには自分の中に多くの引出しを作っておく必要があります。植栽の機能もそれだけでデザインができるわけではありませんが、ぜひとも作っておきたい引出しの一つです。

1.緑陰

 夏の強い日射を防ぐために植えられた樹木を緑陰樹と呼んでいます。冬場に日差しをさえぎらない落葉樹が使われますが、公園などで使われる緑陰樹の種類にはケヤキ、ユリノキ、エンジュ、プラタナスなどがあります。

2.遮蔽

 住まいの周りでは目隠しを必要とする場面が珍しくありません。あるときはプライバシーを守るためで、あるときは見苦しいものを視野から隠すためです。樹木を使えば高さのある目隠しを作ることもできますし、人工的な構造物より見た感じがやわらかく、枝葉の剪定によって透かし具合を調整することも出来ます。

3.防風

 樹木による風除け効果を利用したのが、防風林や北風を防ぐための高生垣です。海岸に植栽された防風林には風だけでなく砂や塩が風によって運ばれてくるのを防ぐ効果も期待されています。樹木による風除けは構造物による風除けのように風下に渦状風による風害を招く心配がありません。

4.防火

 樹木は火災のときに放射熱を遮り、枝葉に含まれる水分が蒸発することで一帯の温度を下げる働きをします。

5.防音

 工場地帯や高速道路の騒音源を住宅から隔てるために植樹帯が作られます。ただ小さい規模では実際の防音効果はあまりありません。音源を視界から遮ることの心理効果があるとされています。

6.微気象の緩和

 樹木を多く植えることで、日射が遮られ、葉からの蒸散が気化熱を奪うため夏は一帯の気温が下がります。また冬の夜は地表からの熱放射を遮るため夜間の気温低下を穏やかなものにします。このような作用から樹木の多いところは温度変化の少ない居心地のよい空間となります。

陽樹と陰樹

 植物はその種類により日向を好むものとそれほど日差しを必要としないものがあります。樹木の場合前者を陽樹、後者を陰樹と呼びます。陽樹と陰樹は明確に分けられているわけではなく、樹種により程度の差があります。陽樹の傾向が強いものは直接日が当たらないと枯れていきます。造園植物の中ではコウライシバなどが典型です。少し陽樹の傾向が強いものは日の当たらない内側の枝葉から枯れていきます。また生育はしますが、花付きが悪くなるものもあります。さらに直接日が当たらなくとも花を付け生育するものは陰樹と呼ばれます。さらに陰樹の傾向が強いものは直射日光で葉が焼けたりかえって弱るものもあります。

 これらはその樹種が水を要求する程度と密接に関係しています。大方の陰樹は本来日当たりが悪く湿った場所に自生する樹木なので、乾燥には弱い傾向があります。逆に陽樹は多少土が乾燥しても元気なものが少なくありません。その樹木が自生しているところを想像すると検討がつきます。

 ですから建築的に屋根が掛かって、雨も光も入らないようなスペースでは生育する植物はほとんど無いと思ったほうがいいです。どうしても植物を使いたいときは、人工的に潅水したり定期的に入れ替えるなどかなりのメンテナンスが必要です。

気温と樹種

 東京を対象に言わせてもらうと温帯性の樹木なら問題なく生育し、熱帯性の樹木は場所や日当たりによっては冬越しするといったところです。観葉植物の中には熱帯性の植物が少なくありませんが、霜が降りなければ屋外で冬越しするものもあります。昨今の温暖化のせいで自分が学んだころの常識が通用しないケースも出てきています。一般的には常緑樹は温かいところに自生する種類で、落葉樹はそれより寒いところに自生する種類です。さらに広葉樹より針葉樹の方が寒さに強い形をしており、カラマツのように落葉の針葉樹はもっとも寒さに強い樹種だといえます。

 園芸的な草花についてはより微妙で、一年草扱いの宿根草というのが時々あります。本来は宿根草ですが夏の暑さで枯れてしまう種類や、冬を越せない種類です。これらはケースによってたまたま夏場に日陰になったり、冬に陽だまりだったりすると宿根化します。我が家では一年草のブルーサルビアが越冬したことがあります。逆に常緑低木扱いのランタナは冬越しが困難でした。

 これら植物についての個別の知識は、本からよりも日頃から町並みに注意をはらい、どういう植物がどういうところで育っているかを見ておくほうが有効です。本に書いてあることが自分の町で通用するかどうかは判らないからです。そうしているとそれぞれの育った時の大きさもわかるようになります。

計画の手順

 少し硬い話が多くなってしまいました。授業ではあまり自分のやり方を押し付けるような教え方はしていません。自分のやり方が一番いいとも思っていないので。Web上では生徒の顔色を見ることができないので、ここでは実際に自分が植栽を計画する時の手順をご紹介することにします。

1.まず植栽のボリュームをどこにもってくるかを決めます。眺める庭園であれば後述の重点の決め方を用います。多くは隠したい近隣の建物の方を厚い植栽にします。次にあまり重苦しくならないように適当に間を取りながら植栽のボリュームを配置します。緑のバランスをとりながら空間を作っていく感覚は生花などの感覚に似ています。

2.全体のボリュームプランができてから落葉樹と常緑時の按分を考えます。目隠しが必要なところは常緑樹を多く、冬場に日差しが欲しいところは落葉樹を多くします。落葉樹は常緑樹に比べて花がきれいな樹種が多いのも配植の手がかりとします。常緑樹ばかりだと色が単調になりがちなので、花が付いたり紅葉する落葉樹を適当に織り交ぜます。常緑樹ではモチ、クロガネモチ、キンモクセイ、ヤマモモ、クス、モッコク、アラカシ、シラカシなどを良く使います。落葉樹ではありきたりですが、花も実もつくハナミズキやシャラ、ヒメシャラ、ヤマボウシなどを良く使います。ウメやサクラ、ましてやマツなどはほとんど使いません。

3.高木の配置を決めたら低木の配置を考えます。高木の花の期間は意外に短いので、高木で一年中花を見られるようになどという計画はあまり立てません(やりがちですが)。高木の花はあくまで補助で、低木や宿根草で花を楽しんでもらうように考えます。この辺まで来ると日向を好む植物と日陰に耐える植物を使い分けます。花の色も同時に考えているのですが、特にお客様の好みが無ければ、自然と私の好みの色使いになっています。傾向としてあまり派手な色やきつい色は避けます。好き嫌いがはっきりするからです。配色として成功する時と失敗する時もはっきりします。しかもそれが何ヶ月かたたないと判らないのも不安です。配色的にきれいに手入れされた花壇は、それなりに手入れが不可欠という点もきつい色を避ける理由です。お客がどこまで手入れをしてくれるか判らないことが多いからです。またそこまで手入れをした花壇を維持できるならば、むしろお客様が自分で作れるスパースとして空けておきます。それで私が良く使うのは少々手入れをしなくともそれなりに花を付けてくれ、大きな株になってもそれが自然の姿、という感じの宿根サルビア風の草花たちです。花色は淡い色のものを多くし、赤や黄色のきつい色はアクセントとして少なめにします。日陰で花が期待できないようなところでは、斑入りの葉がきれいな植物を採用します。

4.よく生垣の樹種を聞かれますが、正直なところそれほど変わったものを提案することはありません。常緑樹で葉色に変化のあるベニカナメモチかレッドロビン、もっと目隠し効果が欲しい時はキンモクセイなどです。目隠しにならなくても良く、高さもそれほど必要としないときはドウダンツツジなども好きです。ツゲはきれいに刈り込みを作るのがけっこう難しく、ウバメガシは暴れがち。ボックスウッドは虫が付き易く、ツバキ、サザンカもチャドクガの幼虫が付く、というわけで他のものはあまり最初からお勧めすることはありません。最後の手段は混ぜ垣といって数種類の樹木を合わせて刈り込んだ垣根にすることもあります。

5.生垣ほどの幅も無い場所などでよく提案するのがトレリス(またはメッシュフェンス)にツル植物を絡ませることです。日当たりがいいところではツキヌキニンドウやテイカカズラ、ビグノニア、ジャスミンなどをよく提案します。多少日当たりが悪いところではサネカズラやムベなどを良く使います。アイビーは繁殖力が強すぎるのであまり使いません。

以上私の配植法でした。

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