実際の設計プロセス

 Web上で設計実習はできないので、実際の物件の設計過程をご紹介しながら説明します。この物件はHPを作成中にたまたま依頼のあった物件で、まだ営業活動中なので、写真は公開できません。

 実際はまず現調(げんちょう)から行います。ここは珍しく新築で、全く庭に既存の樹木がないところから設計を始めるケースです。

 図面が無いので、敷地の形状を計らなければなりません。よほど広大な敷地でなければまず建物の形状を計りだして、次に建物の角から敷地境界までの長さを計ります。造園の計画はそれほど精度を要求されないのでこの程度でも充分計画はできます。今回は既存の樹木が無かったので大変単純ですが、既存樹があるときは、その位置も記録していかないと設計できないので、現調だけでもけっこうな作業になります。

 左の図は現調から持ち帰った図を正確な図面に書きなおしたものです。この配置図をコピーしてラフな計画を書いていきます。

 事前の情報としては、道路境界に白いアメリカン風のフェンスをめぐらし、その内側にバラを絡ませられるようなトレリスを作るというご希望でした。

 それにこちらからいろいろなイメージを付け加えていきました。バラが好きならばある程度庭いじりが趣味と考えていいと思います。その場合けっこう大事なのは園路の計画だと思っています。園路はその廻りの草花がガーデニングの過程で色々変わっていっても変わることがなく、庭のレイアウトを決定することになります。そして草花を手入れしたり雑草を取ったりするのに、手が届くのは1mくらいまでだからです。草取りの手間を省くためにも必要でないところは積極的にペイブしてしまうケースもあります。

 今回は庭の西側の植栽を厚めにし、左の勝手口から武蔵野の雑木林風の植込みの中を通って芝生の庭に出てくるという計画にしました。オープンな芝庭と雑木の庭を合わせて、まだ好みのはっきりしないお客様の反応を見ようという提案上の作戦でもあります。

 雑木の庭の中の園路は飛石と枕木でゆっくり歩かせます。それに対し芝庭の方は芝生のエッジを兼ねた曲線のレンガ敷きと建物沿いの直線的な枕木で、行動的な園路にしています。

 園路の計画の次は植栽の計画です。西側の雑木の植栽は、西日除けも兼ねています。数本の落葉広葉樹の株立ちと冬場に寂しくなりすぎるのを防ぐための常緑中木を配置します。

 こちら側が全体の中の重点になるので、反対側の角に受けの常緑高木を配置します。

 ここまでできたらパースを書きます。ここで書くパースはイメージスケッチではありません。正確なパース図法でどのような景色になるかシュミレーションすることが目的です。設計者のイメージをお客に伝えるためのプレゼンテーションとは根本的に違います。 

 パース図法の具体的方法は別なページを用意したいと思います。とりあえず、今まで書いた平面図をコピーして、その上に1m角の格子を書きます。

 次に別の紙にその格子に相当する傘を書きます。

 その傘の上に視線を表す補助線を書いて格子のパースが完成します。この格子を手がかりに平面図を格子のパースの上に書き写します。

 平面図が書き写せたらそれぞれの樹木に高さを

与えます。これでパースの下書きができました。この下書きの上にトレーシングペーパーを重ねてパースの仕上げをします。

 手前の植栽などから書き込んで行き、奥のものは省いたり薄く書いて遠近感を出します。手前のものは濃淡をはっきり書き、遠くのものはぼんやり書きます。

 ここで重要なのは書きあがっていくパースを見て、植栽の足りないところには樹木を増やしたり、低木の配植の適否を確認することです。

 一般に敷地のエッジや園路の端を隠すように低木などを植栽すると”暗示”の効果で敷地が広く感じたり、園路が遠くまで続いているような感じに作ることができます。

 ここで増やした樹木などは平面図にフィードバックします。

 これで平面図の要素が決定し、ハッチングや材質感を書き込めます。

 平面図の植栽は私流の書き方では、常緑樹と落葉樹は図から区別がつくよう表記しますが、細かい樹種は引き出し線で、記号を付けて、別にリストを付けるようにしています。樹種名までを図面の中に書き込むと細かすぎて図面が見難くなるからです。また低木などは、特別な意図が無ければ細かい位置までは指定ぜず、マッスで表現します。現場で納品された植物の大きさを見てからでないと、本当の位置は決められないからです。

 雑木の庭の方の低木、下草は日陰に強いものを選び、芝庭の方は陽樹で花のきれいなものを選びました。一番西日の当たるところは、我が家で実証済みのアオハダにしました。樹種によると日焼けをおこすことがあるので。

 前にも書いたように授業ではこのような具体的な設計方法をあえて教えることは希でした。設計方法はプランナー毎に違ってもいいと思っているからで、はじめから設計例を示したのでは、先入観ができてしまいます。

 パースなども私のパースはかなり書き込んだ部類で、多くのプランナーはここまで書き込むことはないと思います。タッチなどはその人の独自のものでもいいと思います。それでも自信をもって提案しているプロの方を何人も知っています。

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