自然風庭園の作庭技法

 デザインは庭であれなんであれ解答が一つではありません。どうすればいい庭ができるかといった絶対的解答も基本的にはありません。お客様が期待しているものあるいは期待以上のものが提案できれば合格です。ですから授業ではテーマを与え、それにそって各自設計をしてもらいました。そして出てきた作品に対してアドバイスや問題点を指摘するという授業を行いました。 

 Web上ではそういうわけにもいかないので、ここで私が造園の会社に勤めていた頃に教わった作庭法をご紹介します。その会社は造園家の故小形研三氏がやっていた庭師の会社で、そこの出身者は皆この作庭法を学んでいます。合わせて自然風庭園作りでよく言われるデザイン上の注意点を解説します。

 ここで紹介する考え方は自分のデザイン手法に染み付いていて、自然風庭園に限らず、エクステリアや洋風のガーデニングの設計にも応用しているものです。

気勢と重点

 この作庭法の一つ目のキーワードは気勢(きせい)です。言葉で説明すると形から感じ取れる勢いとでも言いましょうか。この気勢は植え方や据え方によって変わります。

 また気勢は形だけでなくボリューム感や存在感といったものからも発せられると考えます。

 水が高いところから低いところへ流れるように気勢は流れます。この流れを石や植木で作っていくことが一つ目のポイントになります。

 気勢の考え方は、細かい植栽にまで影響を与えます。植栽する木は石や建物から気勢を受けています。ですからそのことを表現するような植え方をします。

  全体の気勢に逆らった植え方や石組はまずい作りとみなされます。

重点と非重点

 二つ目のキーワードは重点です。重点というのは庭で最も重みのあるところ、ボリューム感のあるところです。具体的にどのようなポイントが重点とみなされるかというと、もっとも高い木が植わっているところや最も大きな石が据えられているところ、最も高いところ、滝石組がつくられているところなどです。重点はそれ以外の非重点と組み合わさってはじめて意味をもちます。どこを向いても重点と同じような植栽をするのではなく、重点を厚い植栽にしたならば非重点のところは薄い植栽にしなければなりません。重点と非重点のメリハリをつけるということがポイントの二つ目です。

 重点というのは回りの環境によって必然的に決まってくることも少なくありません。まず庭から外の景色を眺めて高い山や建物があったらそちら側が重点です。次に敷地に高低差があれば高い方が重点です。またとなりに隠したい窓などがあればそこに高い木を植えなければなりませんから、そちら側が重点になります。既存の庭に動かせないほど大きな石や樹木があればそこが重点になります。

 決められた重点から気勢が生じ、流れとなって庭を流れていくイメージを植木や石で表現し、庭全体を統一した想像上の力学的な場として形作っていくのがこの作庭法の特徴です。

7:3のバランス

 造園の現場でも生花のように見た目に7:3くらいになるバランス感覚が好まれます。言い換えるとポイントとなる物を視野の中心にはもってこないようにするということです。これは絵画の世界の黄金比をもっと簡単にしたものとも考えられます。

不等辺三角形

 自然風植栽などでまず言われることは、樹木3本が一直線に並ばないようにということです。それらはお互いに等間隔にならないよう、不等辺三角形になるような位置に植えるようにします。本数が増えてもどの木を見ても不等辺三角形になっているのが望ましいのです。

  

デフォルメ

 デフォルメは誇張ということです。流れなどを川下から眺めると左右に蛇行しているように見えるはずです。その蛇行している景色を意図的に作ってあげるとそれほど奥行きのない庭でも遠くから流れてくるような流れを作ることができます。

遠近感の強調

 風景画の中に手前の木の枝越しに遠くの景色を描いたものを見たことがあると思います。近景と遠景のコントラストを付けて遠近感を感じさせる手法です。このように建物の近くに幹越しに遠くの景色が見えるような落葉樹を植えて遠近感を強調する手法がよく使われます。

 庭の中ほどに四つ目垣などを作り、垣根を透かして向うを見せることで手前と向うを実際以上に距離のある景色に感じさせるのも遠近感の強調手法です。

暗示

 隠すことでそこにもっと広がりがあるように想像させる手法が良く使われます。これは暗示効果を利用したものです。不定形の地模様を作ってもその全てが見渡せてしまってはその奥行き感も知れたものになってしまいます。そんなときに入り江のように凹みを大きくし、視線から隠れるような部分を作ってあげると、そこに実際以上の空間が隠れているように想像されて庭を広いものに感じさせることができます。そのような凹みを懐(ふところ)と呼びます。

   

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